インスリン注射の誤解

糖尿病は広く知られている病気ですが、誤った情報を認識している方も少なくなりません。

例えば、糖尿病という名前から甘いものの食べ過ぎで発症してしまう病気だと思っていたり、糖尿病の薬を飲みだすと一生飲み続けなければならないと誤解していませんか?

そしてもうひとつ、インスリン注射に対する誤解が挙げられます。

インスリン注射による治療は、糖尿病の進行が進み、深刻な状態になってから行われると思われているようですが、決してそのようなことではありません。

ここでは、インスリン療法の目的やインスリン注射の効果についてご紹介します。

インスリン療法の目的

誰でも食事をするとブドウ糖の量は上昇しますが、数時間後には食事前と同様の状態に戻っていきます。しかし、時間が経過しても元に戻らず、血糖値が高い状態が続くのが糖尿病です。

食事により増えたブドウ糖は『インスリン』という膵臓から分泌されるホルモンの働きにより細胞に取り込まれ、エネルギーとして利用されて減少していきます。

インスリンの働きが弱い、分泌量が少ないなどの原因により、余分なブドウ糖が血液中に留まり、高血糖状態となるのが糖尿病なのです。

糖尿病治療は血糖値をコントロールすることにあります。基本的には食事療法・運動療法・薬物療法の3つの方法で血糖値を正常な値に保つよう治療していきますが、飲み薬での効果がみられないときや、妊娠してる場合などはインスリン療法で治療を行います。

最近では、疲れた膵臓を休ませることを目的として、インスリン療法を取り入れることもあります。

インスリン療法は不足しているインスリンを注射で補う治療法です。インスリン治療を行う判断基準は、病気の進行具合や病気の重さによるものではありません。

また、インスリン注射を始めるとやめられなくなるというようなこともありません。

誤った知識に惑わされずに、糖尿病と正しく向き合うことが大切です。

インスリン製剤の種類

インスリン製剤は持続時間や作用発現時間によって

・超即効型

・即効型

・中間型

・混合型

・持効型

上記の5つに分類され、患者さんのインスリン分泌の状態に合わせた製剤が使用されます。

最近登場した超即効型は、注射後10~20分程度で作用が現れるため、食事の時間が不規則な人でも食事前に注射することができ、便利になりました。

インスリン注射と低血糖

インスリン注射で気をつけなくてはいけないのは低血糖です。低血糖とは高血糖と逆で、血糖値が正常値よりも低い状態のことをいいます。

不足分のインスリンを補うための注射ですが、量が多すぎたり、時間を間違えたり、食事の量が少なすぎるなどの理由から、インスリンが効きすぎてしまうのです。

血糖値は下がれば下がるほど良いというものではなく、正常値の範囲内であることが大切です。

低血糖を起こすと、めまいや手の震え、冷や汗、動悸、頭痛などの症状が現れます。

これは、脳に栄養が行き届かないために起こるもので、ひどい場合には昏睡状態に陥ることもあるのです。

インスリン療法による低血糖を、完全に防ぐことは難しいですが、低血糖が起きた時の回復手段として低血糖用のブドウ糖タブレットなどを常備しておくことで容易に回復するため、必要以上に怖がらずにしっかりと治療に取り組みましょう。

インスリン注射は痛い、面倒と思われていますが、医療の発達により、痛みもなく簡単に注射できる注射器が沢山あります。

インスリン療法で効果的な血糖値コントロールができると医師に診断されたら、インスリン注射を正しく使用し、積極的に治療に取り組むことが大切です。