運動療法で得られる効果
インスリンを節約できる
定期的に運動を続けることで、筋肉や脂肪など各組織の細胞がもつ、ブドウ糖や脂肪をエネルギーに変える能力が高まるので、その分インスリン量が少なくてもすみ、インスリンの節約につながります。また、エネルギー源として血糖を使うため、高血糖の防止にもつながります。
中性脂肪やコレステロールを減らす
糖尿病の人は、動脈硬化に注意する必要があります。運動によって、血液中の中性脂肪や動脈硬化のもとになるコレステロールを減らす効果が期待できます。
心臓や肺を強くする
定期的な運動は心臓や肺の機能を高めます。心肺機能を強化することによってより活動的な体に、運動に適した体になります。
血圧を下げる
血圧が下がり、心筋梗塞などの心臓病の予防につながります。
足腰を強くして老化を防ぐ
食事療法のみで減量すると、脂肪が減少するだけでなく筋肉や骨が衰えることがあります。運動することで筋肉を鍛え、骨からカルシウムが失われるのを防ぐことができます。
血液の循環を促進する
末梢への血液がよくなるため、手足のしびれやこむらがえりなどの神経障害が改善されます。
ストレスを解消する
楽しくスポーツすることで、気分が爽快になり、ストレスの発散につながります。
日常生活が快適になる
筋力や瞬発力、平衡感覚、心肺機能がアップし、体の動きが軽くなります。
糖尿病はなぜ発病するのか?
これについては、生まれつき糖尿病にかかりやすい素質(遺伝的な体質)を持っている人が、 糖尿病を起こす何らかの誘因(引き金)に出会って発病する、と考えられています。
糖尿病にかかりやすい素質といっても、それを持っている人が必ず発病するわけではありません。
あくまで、糖尿病になりやすいか、なりにくいかといった程度の問題です。
ただ、親戚や 親戚 に糖尿病の人がいる場合には、より発病の確率は高くなります。
1.肥満
肥満は糖尿病の発病の誘因として最も多いものです。肥満すると、体脂肪が増え、肥満の肥満の働きも何らかの形で低下するため、肥満の細胞に対するインスリンの作用が低下します。
このため、普通の人より、すい臓からインスリンが多く分泌される必要があります。
それが長期間続くとすい臓は働きすぎて疲れてしまい、最後にはインスリンをあまり分泌しなくなってしまうのです。
2. インスリン
食べ過ぎとは体が必要としているエネルギー分以上に食べてしまうことです。
普通、必要な物を必要な分だけ食べることは食欲が調整しています。
この食欲は脳による満腹中枢と飢餓中枢のバランスで調整されています。そしてこれらの中枢の働きを調整している代表的な物質に血液中のブドウ糖、つまり血糖があります。
食事をすると、この血糖の値が上がり満腹中枢が刺激されて「食事を止めなさい」という指令が出ます。 ところがこの食欲の調整に狂いが起きることが多くあります。 テレビを見ながら無意識に食べ過ぎる、色々なストレスによる自棄食いなど原因は様々です。 そして運動不足が続き、食べ過ぎの状態が続くと、必要以上の栄養が体内に入り肥満になるわけです。
3.運動不足
運動不足で消費エネルギーが落ちると、当然肥満しやすくなります。
しかも、余分なブドウ糖の一部は皮下脂肪として蓄えられますから、体脂肪率が上昇します。
また、運動量が低下してきますと、筋肉の量がどんどん減っていき、ブドウ糖をうまく利用できなくなります(ブドウ糖は筋肉のエネルギー源)。
そうなると血液中に糖が溢れて血糖値がどんどん高くなっていきます。
4.ストレス
ストレスを感じると自律神経系や副腎などから、さまざまなホルモンが多量に分泌されます。
これらのホルモンは、ある程度血糖値を上げる働きがあります。
このため、インスリンの働きが妨げられてしまうのです。
5.加齢
年をとるにつれて、糖質の利用が悪くなると同時に、細胞が老化してすい臓の働きが悪くなるなど、体全体の機能が低下します。
このために、血糖値、特に食後の血糖値が下がりにくくなります。
6.妊娠
妊娠中は胎盤から分泌される、ホルモンがインスリンの働きを妨げるため、糖尿病を起こしやすくなります。 出産すると、健康体に戻ることもあれば、戻らないこともあります。
2児、3児と妊娠を繰り返すと、糖尿病になりやすくなることも知られています。
たんぱく質や脂質はゆっくりとブドウ糖に変化する
横の緑の線が時間です。縦がどれだけ血糖に変化したかという割合です。たんぱく質・脂肪は、それぞれ50%・10%が糖質に変化します。そのスピードは非常にゆるやかです。
食後に血糖値が急上昇
でも、炭水化物は食後2時間以内に100%糖質に変化します。 この急激な変化に対して、インシュリンが働き、健全な人は血管内の血糖値上昇を抑えることができます。 インシュリンの効果の低い人や出にくい人、つまり糖尿病の人は血糖値のコントロールがうまくいきません。 ブドウ糖は血管内でとどまります。これが一番危険なのです。
炭水化物は、糖質のかたまりです。できるだけ食べないことが重要です。
たんぱく質にも糖質は含まれますので、良質なたんぱく質で糖質の補充をすることが重要です。
徐々に血管を傷つける・サイレントキラー
栄養源であるはずのブドウ糖が、体を傷つけてしまう
とどまったブドウ糖は血管を傷つけます。糖尿病の人に心筋梗塞(心臓の血管が詰り、心臓の筋肉が壊れる)や動脈硬化(血管が硬くなり血液の流れが悪くなる)がおこりやすいのはそのためです。
もともと、血管は高血糖状態に耐えうるようにできてはいません。血糖を体の隅々までエネルギーとして運搬する役目を持ちながら、高血糖という高負荷状態に耐えれるようにできていないのです。
人間を含め動物は生存そのものが飢餓との戦いであり、難しい言葉で言うと”ホメオスタシス”(生命維持機能)として、生き残るということに体そのものを変化させてきましたから、低血糖に対する防御本能は持ち合わせていても、その逆は必要なかったのです。
摂りすぎたブドウ糖が、すべての原因
体内に取り込まれた炭水化物はオリゴ糖に分解され、腸のなかでα-グリコシターゼという酵素によってブドウ糖などに分解されます。ブドウ糖は、腸壁から吸収され血液を通して肝臓に運ばれ、エネルギー源として蓄えられます。ところが、糖分が過剰に吸収された場合、肝臓に蓄えられなかった余分なブドウ糖は、膵臓から分泌されるインスリンというホルモンによって中性脂肪に合成されます。この中性脂肪こそが、肥満の原因であり、さらに糖尿病などの生活習慣病を誘発するのです。
糖尿病になると、様々な二次的な障害(高血圧・心筋梗塞・脳梗塞等)の症状が現れてくるのも、そこに原因があります。
糖尿病が、サイレントキラーと言われるのは自覚症状が無いところに現れるからです。 血管が痛いと言う人を聞いたことが無いように、じわりじわりと体の中の伝達経路を徐々に侵し、心臓や脳という非常に重要な器官を破壊し続けるのです。症状が現れて、外科的な手術を行わなければならない必要に迫られたときに、血管がボロボロでは手術もできません。手術には体力が必要です。
糖尿病とはその名の通り尿に糖が出る病気
しかし尿に糖が出ることイコール糖尿病とは言えないのです。
なぜ尿に糖が出たのかという「原因」が問題なのです。私たちが食事をすると、食べ物は口の中と小腸でブドウ糖に分解されます。
ブドウ糖は血液の中に入り脳や筋肉、脂肪などの細胞に運ばれエネルギーとして使われます。血液の中のブドウ糖の量を「血糖値」と呼びます。食後には誰でも血糖値が上昇しますが、膵臓から多量のインスリンが分泌され1~2時間ほどで普通の血糖値に戻ります。
ところが糖尿病の人は血糖値を調節できずに、高血糖の状態が続き尿の中にまで糖が漏れてくるのです。
血液1dl中に糖が160~180mgになると、腎臓の処理が間に合わず尿に糖があふれてしまいます。
尿に糖が出る原因は高血糖だけでなく、尿をつくる腎臓に異常がある人や、健康な人でも体調のよくない時、妊娠中などに尿に糖が出る場合があります。
したがって糖尿病というのは「尿に糖が出る病気」というよりは「血液中のブドウ糖が異常に多い病気」と言えます。糖尿病とは「高血糖病」なのです。
ですから糖尿病の検査としてはまず尿検査、そして血液を採取し血糖値を調べます。
しかし血糖値は食前と食後で大きく変化したり、その日の体調にも左右されるので、今ではHbA1cの測定が主流となっています。
Hbとは赤血球の中にあるヘモグロビンのことで、このヘモグロビンは主に全身に酸素を送る仕事をしています。
血糖値が高い状態が続くと、ヘモグロビンとブドウ糖が結びついて徐々に「糖化ヘモグロビン(HbA1c)」に変化してきます。
HbA1cの割合を調べると、患者の過去一ヶ月から二ヶ月の位の血糖値の平均状態がわかるのです。
正常な人は4~6%位です。8%を越えていたら血糖値の状態に異常が発生していると考えられます。
身につけよう!-正しい有酸素運動-
糖尿病の運動療法としてもっとも大切なことは、有酸素運動を毎日行う、ということです。
有酸素運動とは、瞬間的に激しく筋力を使うのではなく、少し息が弾む程度でおよそ20分以上続けられる運動です。 有酸素運動は、血液中の糖や脂肪を効率よく消費するのに適しています。
1.有酸素運動のメリット
- 心臓への負担が少ない
- 血管を丈夫にし、血圧や脈拍が上がりにくくなる
- 筋肉に疲労のもとである、乳酸の蓄積が少ない
- 長時間続けられるので、消費カロリーが大きい
- 脂肪の消費が高い
2.一般的な有酸素運動の例
代表的な有酸素運動と言えば、ウォーキング、ジョギング、サイクリング、スイミング、エアロビクスなどです。
3.正しい有酸素運動 ―生活習慣に上手に取り入れてみましょう-
- 無理をしないで楽しむ
- 何よりも20分以上続けられることが大切
- 長期間続けることを心がけ運動する
4.ウォーキングと自転車は有酸素運動の優等生
運動療法にはこれといった決まったやり方はありません。
しかし方法などの好ましい条件は、次に示すようなものです。
- 長時間行える運動
- 毎日行える運動
- 長続きする運動
- 運動強度を自由に変更できる運動
- 全身の筋肉を使う運動
このような条件をすべてクリアできるのが、ウォーキングと自転車なのです!!