糖尿病の人の10人に7人が「病気のために人生が制限されるのは怖い」 人生を精一杯生きるために

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大により、糖尿病とともに生きる人々の多くが不安を感じていることが、米国糖尿病学会(ADA)と米国心臓学会(AHA)の調査で明らかになった。
「この病気に負けないようにして、人生を精一杯生きたい」と考えている人が多く、62%の人が「人生でやりたいことをやるために健康が必要」と感じていることも分かった。

糖尿病と心血管疾患には大きな関連がある

米国糖尿病学会(ADA)と米国心臓学会(AHA)は、2,000人の米国人を対象に5月4日~14日に調査を共同で実施した。それによると、成人の10人に7人は、糖尿病や心臓病などの病気のために、人生で実行したいと望んでいることが妨げられてしまうことを恐れている。

 

両学会は共同で「心臓から糖尿病を知ろう(Know Diabetes by Heart)」というキャンペーンを実施している。多くの人の健康を脅かしている2型糖尿病と心血管疾患の関連に焦点をあて、啓発活動を展開している。

 

キャンペーンの一環としてアンケート調査を行った結果、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行は、多くの人の生活全般に変化をもたらしたことが明らかになった。

 

米国には2型糖尿病とともに生きる人が数百万人に上る。ロックダウン(都市封鎖)や外出の自粛が要請された結果、家庭で家族や友人と過ごす時間が増えたという意見もあったものの、多くはCOVID-19の流行が負の影響をもたらしたと感じていることが分かった。

 

米国心臓学会(AHA)が公開しているビデオ
COVID-19に対策するために、糖尿病を改善することはますます重要です

糖尿病の合併症を防ぐために

糖尿病の人が、血糖コントロールが不良であると、心血管疾患や脳卒中などの合併症のリスクが上昇する。さらに、新型コロナウイルスに感染した場合には重症化しやすくなる。

 

心臓は左右の心室が収縮・拡張を繰り返し、ポンプのように血液を循環させている。この働きが低下するのが心不全だ。息切れやむくみなどの症状が起こり、適切な治療を行わないとだんだん悪くなり、生命を縮めることになる。

 

心臓に血液を送っている冠動脈が動脈硬化によって詰まってしまう心筋梗塞が、心不全の原因としてもっとも多い。糖尿病、高血圧、脂質異常症、肥満・メタボは、心筋梗塞を引き起こす動脈硬化の危険性を高める。

 

60歳の2型糖尿病の人が、十分な治療を受けないまま、心筋梗塞、心不全、脳卒中といった心血管疾患を併発すると、寿命が平均で12年短くなるという報告がある。しかし、良好な血糖コントールを保ち、合併症を予防するために対策をしていれば、糖尿病でない人と同じように長生きできるようになる。

人生でやりたいことをやるために健康が必要

調査では、「自分の人生経験は制限されている」と感じている人の割合は、2型糖尿病のある人で89%、心疾患のある人で90%、脳卒中のある人で87%に上り、これらの疾患のない人の58%に比べ大幅に高いことが示された。「人生でやりたいことをやるために健康が必要」と答えた人は、回答者の62%に上った。

 

3人に2人(65%)は、家族や友人などの健康が損なわれ、自分とともに充実した生活を送れなくなることを心配している。その割合は24~39歳のミレニアム世代で73%、40~55歳のX世代で69%、56歳以上のベビーブーム世代の58%に上る。

 

年齢を重ねるにつれ、自分の健康を気にするようになった割合は、56歳以上のベビーブーム世代では68%に上り、ミレニアム世代の48%、X世代の65%より高い。この世代では75%の人が、健康を損なうことでやりたいことができなくなってしまうのを恐れている。

COVID-19対策でも良好な血糖コントロールは必要

調査では、COVID-19の世界的な拡大の影響を受け、多くの人が毎日の生活で感じたり経験していることが変わったと回答した。10人中8人は、家族や親しい人と過ごす時間を、より価値の高いものと感じるようになった。85%の人はそうした時間に感謝するようになり、普通の日常生活を送れることをかけがえのないことだと感じるようになった。

 

「COVID-19の流行拡大によって、結果として、糖尿病や心臓病の患者さんの健康の状態とリスクに対し、直接にスポットライトが当たるようになりました」と、AHAの予防医療部長のエドゥアルド サンチェス氏は言う。

 

「糖尿病の人がCOVID-19に感染すると、血糖が高いままだと重症化するリスクが高まることが知られています。血糖コントロールを改善して、心臓病や脳卒中などの合併症の危険性を減らすことは、これまで以上に重要になっています」。

 

「希望の兆しもあります。医療は進歩しており、健康を脅かす障害をコントロールし抑制できるようになっています。2型糖尿病に対するSGLT2阻害薬やGLP-1受容体作動薬などの新しい治療法が登場し、心血管疾患のリスクを低減するためのツールは増えています」と、サンチェス氏は指摘する。

 

米国心臓学会(AHA)が公開しているビデオ
10人に7人が病気のために人生が制限されることを恐れている

 

糖尿病とともに生きる人々を支援

「糖尿病の治療では、医療機関で定期的な診療を受けることが重要ですが、COVID-19の拡大により、通常の通院ができなくなった患者さんが少なくありません」と、ADAの医療科学部のロバート エッケル氏は指摘する。

 

「この病気に負けないようにして、人生をフルに生きるために、かかりつけの医師に診てもらい、HbA1cや血圧、コレステロールなどをチェックし、心疾患や脳卒中を予防する計画を再開することが必要です。通院治療を中断することなく、処方された薬を指示通り服用することは、あなた自身を守るためにもっとも重要です」。

 

多くの国や地域で遠隔で医療サービスを受けられるように、環境整備が進んでいるが、対面診療で患者から得られる情報は多いので、定期的に医療機関を受診することはやはり欠かせないとしている。

 

病気による多くのストレスにより、糖尿病の治療薬の変更が必要になる可能性もある。糖尿病の薬物療法や投与量の変更は、患者の状況や病歴にもとづき、かかりつけの医師とともに決定される。

 

「COVID-19で問題が発生し、医師の診察が必要となった場合に、医師や医療機関に連絡する方法を知っていることも必要です。そうした医療者は、2型糖尿病とともに生きる人々が、より長く、より健康的に人生を送るのを支援してくれます」と、エッケル氏は述べている。