厚生労働省の発表によると、糖尿病の疑いのある人は全国で2,210万人いると推定されています。(平成19年国民健康・栄養調査)
『太った人がかかる病気』という印象の強い糖尿病ですが、肥満体型の欧米人と比べ、私たち日本人は痩せ型であるにもかかわらず、何と100人のうち17人が糖尿病予備軍なのです。
国民病といっても過言ではない糖尿病。なぜ痩せていても発症する可能性があるのでしょうか。
糖尿病を発症する原因を改めて理解し、体型や年齢を問わず、日頃から糖尿病予防を心がけましょう。
『痩せているから大丈夫』ではない糖尿病
食生活の欧米化に伴い、糖尿病患者が急増したため、昔は『贅沢病』と呼ばれていました。贅沢=肥満の図式もあり、糖尿病は太った人の病気、と広く認識されています。
しかし、糖尿病は血液中の血糖の値が高い状態が続く病気で、必ずしも肥満体型だと血糖が高いというわけではありません。
高血糖を引き起こす最大の要因は、2つ考えられます。それは、『インスリン不足』と『糖質摂取量過多』です。
通常、摂取された糖質はブドウ糖に分解され、主に脳のエネルギー源として利用されます。余ったブドウ糖はインスリンの働きにより、中性脂肪や肝臓などに蓄えられますが、インスリンの働きが弱かったり、分泌量が少ない場合、またはインスリンはしっかり働いているのにブドウ糖の量が多すぎる等の場合、ブドウ糖は血中に留まることになります。
この『高血糖』の状態が慢性的に続くと、糖尿病を発症してしまうのです。
糖尿病発症の原因を考えた場合、痩せていても、インスリン分泌量が少なく、働きの悪い体質ならば、糖尿病になる可能性は高いといえます。
日本人はもともと欧米人よりもインスリン分泌量が少ない民族といわれていますので、痩せ型の糖尿病が多い理由のひとつかも知れません。
また、肥満体型の人は過食の場合が多いため、『糖質摂取量過多』になりやすいのですが、少食で痩せ型の人でも、麺類やご飯ばかり食べていると、糖質摂取量過多になり、インスリンの働きが追い付かなくなることも考えられます。
1型糖尿病と2型糖尿病
糖尿病は大きく1型と2型に分けられます。一般的に知られている糖尿病は、生活習慣などで発症する2型糖尿病です。
1型糖尿病の発症率は10万人に約1.5人といわれており、生活習慣とは無関係のウィルス感染や自己免疫反応の異常により発症すると考えられていますが、はっきりとした原因は分かっていません。
40代で発症する確率が高い2型糖尿病に比べ、1型糖尿病は10代という若年での発症が多いのが特徴です。
1型は発症率は低いものの、突然発症し、症状が劇症化したり、急速に悪化する場合が多いため、注意が必要です。
1型糖尿病の存在や、糖尿病発症理由を考えれば、『若いから、痩せているから大丈夫』ではなく、誰でもかかり得る病気だということを認識する必要があります。
糖尿病は、痩せてる人ほど要注意!
痩せ型の糖尿病が怖いのは『無関心』です。中高年で肥満体型の場合、頭の隅で『糖尿病』を意識しているので、日頃から血糖値を気にしたり、身体の異変に気づけば、糖尿病を疑ったりします。
しかし、痩せ型の人の多くが、自分が糖尿病になる訳がないと考えているのため、定期的な健診や食生活の見直しがおろそかになり、『もしかして』という早期発見のチャンスも見逃してしまうのです。
痛みや外的変化などの自覚症状が無い糖尿病の早期発見には定期健診が最も有効です。
痩せているから大丈夫、と考えていた方は、この機会に健康診断に行かれたり、自宅で血糖値を測定できる機器や検査キットを利用するなど、一度血糖値を測定してみてはいかがでしょう。