夫が高血圧、2型糖尿病、脂質異常症で治療を受けている妻は、同じ病気で治療を受けるようになる割合が1.5~2.6倍高いことが、筑波大学の研究で明らかになった。夫婦は同じ生活習慣病を共有しやすいことが示された。
「家族が一緒に生活を改善したり、健康診断を受けることが重要です」と、研究者は述べている。
夫婦は同じ生活スタイルを共有している
研究は、筑波大学医学医療系ヘルスサービスリサーチ分野/ヘルスサービス開発研究センターの田宮菜奈子教授、杉山雄大准教授、渡邊多永子元助教(現厚生労働省)らによるの。研究成果は、「BMJ Open」でオンライン公開された。
多くの夫婦は遺伝的つながりがないが、同居して同じ食事をとるなど、飲酒や飲食、喫煙、運動など、互いの生活スタイルに影響を与え合う。
このように生活が似通うことで、配偶者が生活習慣病をもつ人は、そうでない人と比べて、配偶者と同じ生活習慣病を発症するリスクが高いと考えられる。
そこで筑波大学の研究グループは、2016年国民生活基礎調査のデータを2次利用し、ともに40歳以上の8万6,941組の夫婦を対象に分析した。
夫婦の居住場所や経済状況、妻の年齢・学歴・飲酒・喫煙・他の疾患での治療の有無の影響を調整した上で比較した。
夫婦は同じ生活習慣病になりやすい
それぞれの疾患(高血圧、2型糖尿病、脂質異常症)について、夫の各疾患の治療の有無別に、妻が同じ病気で治療を受けている割合を算出し、カイ二乗検定を使用して割合に違いがあるかを検討した。
その結果、夫が高血圧、糖尿病、脂質異常症で治療を受けている妻は、夫がその病気で治療を受けていない妻と比べて、同じ病気で治療を受けている割合が高いことが示された。
さらに、多変量ロジスティック回帰分析を実施し、夫婦の居住場所や経済状況、妻の年齢・学歴・飲酒・喫煙・他の疾患での治療の有無の影響を調整した上で、夫が各疾患で治療を受けている場合に、妻が同じ病気で治療を受ける相対リスクを推定した。
その結果、夫が高血圧、糖尿病、脂質異常症で治療を受けていると、妻が同じ病気で治療を受けるリスクは、それぞれ1.8倍、1.5倍、2.6倍に上昇することが明らかになった。
家族がいっしょに食事や運動を改善し、健診を受けることが大切
Concordance of Hypertension, Diabetes, and Dyslipidemia in Married Couples: Cross Sectional Study using Nationwide Survey Data in Japan(BMJ Open 2020年7月28日)