糖尿病を支える3つの方法です。とくに初期の段階では『食事療法』『運動療法』を行い、それでも十分な効果が得られない場合に『薬物療法』を行います。
食事と運動で痩せることを目的としていると思われがちですが、実はそれだけではありません。『今日は食べ過ぎたから、ちょっと余分に運動すればいい』という簡単なものではないのです。
ここでは、なぜ運動が必要なのか、どのような運動が効果的なのかを取り上げていますので、糖尿病治療・予防にお役立てください。
『食事療法』と『運動療法』の目的の違い
肥満が糖尿病の発症や進行に関与していることは知られています。肥満解消は糖尿病予防・治療に有効ですが、糖尿病治療で最も大事なのは、血糖をコントロールすることに他なりません。
食事療法と運動療法は肥満解消を行うだけでなく、それぞれ違った役割を持って血糖コントロールを行っていますので、どちらかを違うもう一方の方法で補うというわけにはいかない訳です。
食事療法では、バランスの良い栄養摂取などにより、食後の血糖値を上げにくくしたり、急激な血糖値の上昇を抑えます。
運動療法では、糖質を摂取した後に体を動かすことで、ブドウ糖の利用が促進され血糖を低下させます。
また、筋肉の活動量を上げることで、インスリン抵抗性の改善を促しています。
では、インスリン抵抗性とはどのようなものなのでしょう。
インスリン抵抗性について
血液中の糖度が高くなると、インスリンが分泌されます。筋肉や臓器はインスリンの作用により血糖を取り込みエネルギーに変えたり蓄えておくことができるのですが、インスリンの働きが悪いと思ったように糖が取り込まれず、血中に糖が残った状態になります。
これをインスリン抵抗性といい、高血糖を引き起こす要因のひとつです。
インスリン抵抗性を改善するための薬もありますが、糖尿病の初期や糖尿病予防には継続的な運動が最も効果的です。
筋肉を動かすことにより、血糖を取り込みやすい状態にすることができます。
また、筋肉の量が増えることで容量が増え、筋肉の活性化にもつながります。
インスリン抵抗性は、肥大化した脂肪細胞がインスリンの作用を妨害するとも考えられています。
このような悪循環を断ち切るためにも、適度な運動が必要なのです。
激しい運動をするほど効果があるように思えますが、糖尿病の運動療法の基本は、血糖値を降下させることにあります。
食後に急上昇する血糖値を抑えること、血糖値を正常に保つための筋肉をつけることがポイントとなります。
2つのポイントを踏まえ、運動する時間や運動の種類を工夫することで、運動の効果を最大限に活かすことができます。
食後1時間くらいに20分以上継続した運動
血糖値は食後1時間頃が最も高くなります。血中にブドウ糖が沢山ある状態で運動をすることで、エネルギー源として血糖を消費しやすくなるのです。
運動開始時は主に筋グリコーゲンが利用されますので、20分以上継続した運動を行うのが理想です。
全身を使った有酸素運動
全身の筋肉を使うことで、身体全体で血糖を下げることができます。筋肉が衰えている場合には、筋肉を鍛えるレジスタンス運動も必要ですが、ウォーキングや水泳などの軽い運動を長く継続して行うことが、糖尿病改善には有効です。
できれば毎日、少なくとも週に3日
運動療法は継続して行うことで効果があらわれてきます。毎日行うことが望ましいですが、少なくとも週に3日は行いたいものです。
30分の時間が取れないからといって運動しないのではなく、10分でも体を動かすことを心がけてください。
また、運動する時間がなくても、一駅歩いたり、エレベータを階段にかえたり、日常の動作を意識することで身体を動かすことができます。
糖尿病は劇的に改善するものではありません。日頃の生活習慣の積み重ねで徐々に改善していく病気です。 食事も運動も、まず意識を強く持ち、できることをしっかりと行っていきましょう。