「減量プログラム」を取り組んだ結果、いったん体重を減らしてやせても、その後にリバウンドして、体重をある程度増やしてしまう人も多い。
こうした減量後に体重が戻るパターンの人であっても、心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患のリスクを減少する効果をえられると、米国心臓学会(AHA)が発表した。
「いったん体重を減らした人でも、その後にリバウンドしてしまうことは少なくありません。そのことが、減量のためのサポートを提供するうえで障壁になっています」と、研究者は述べている。
「しかし、過体重や肥満の悩みを抱える人々が減量に取り組むことは、2型糖尿病や心血管疾患のリスクを軽減するための効果的な方法であることは確かです。減量は無駄にはなりません」としている。
減量後にリバウンドしても健康効果は続く
肥満や過体重の人は、高コレステロールや高血圧になりやすいことが知られている。これらは心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患のリスクを高める要因となる。
肥満は、血糖値を下げるインスリンの効果を発揮できなくなるインスリン抵抗性も促進しやすい。インスリン抵抗性があると、2型糖尿病のリスクが上昇する。
米国心臓学会(AHA)によると、米国だけでも過体重や肥満が原因で、2020年に240万人が死亡している。肥満は世界的に、社会的な問題になっている。
そこで、英国のオックスフォード大学は、健康的な食事や運動・身体活動の増加など、生活スタイルや行動の変容を促す「減量行動プログラム」を開発した。
プログラムは、肥満や過体重の人が体重を減らし、健康的な体重を維持できるよう工夫されている。しかし、いったん体重を減らしてやせても、その後にリバウンドして、体重をある程度増やしてしまう人も多い。
こうした減量後に体重が戻る体重変化のパターンの人であっても、心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患のリスクを減少する効果的はあり続けることが、同大学の研究で明らかになった。
減量に成功すると心臓病や糖尿病のリスクが減少
「減量に取り組んでいる患者さんや、肥満症や糖尿病の治療を行っている医師の多くは、いったん体重を減らしても、その後にリバウンドしてしまうことが多いので、減量の取り組みはあまり意味がないと考えてしまいがちです」と、オックスフォード大学プライマリケア健康科学科のスーザン ジェブ教授は言う。
「しかし、減量プログラムに参加して体重を減らすのに成功した人は、その後数年にわたり心血管疾患のリスクの減少効果を得られることが明らかになりました。減量に取り組むことは、長期的には無駄にはなりません」としている。
研究グループは、124件の国際的な科学的研究を評価し、集中的な減量行動プログラムの参加した患者と、プログラムに参加しなかった患者との、心血管疾患と2型糖尿病の危険因子を比較した。
対象となった参加者の数は5万人以上で、平均年齢は51歳で、体格指数(BMI)の平均は33で、肥満と判定されていた。
平均28ヵ月の追跡調査が行われ、参加者は食事療法や運動療法に取り組み、その方法は対面による個別指導やグループ指導、スマホのアプリや電話などによるオンライン指導、さらには金銭的インセンティブを設定したものなどさまざまだった。
その結果、プログラムの参加者は平均して体重を2~5kg減らし、年間に0.12~0.32kg減らした。集中的な減量行動プログラムに参加した患者は、参加しなかった患者に比べ、体重をより減らし、心血管疾患や2型糖尿病の危険因子が減少したことが明らかになった。さらに、プログラムが終了した後も、その効果は数年にわたり続くことも分かった。
減量は無駄にはならない 血圧や血糖値が低下 コレステロールも改善
減量行動プログラムに参加した患者では、次のような効果が示された。
▼ 収縮期(最高)血圧値が、1年後に平均して1.5mmHg低下し、5年後にも0.4mmHg低下。
▼ 1~2ヵ月の血糖値の平均が反映されるHbA1c値が、1年後も5年後も0.26%低下。
▼ 善玉として知られているHDLコレステロールと、総コレステロールの比率も改善。
いくつかの研究では、減量プログラムが終了した人は、たとえその後に体重をある程度戻してしまったとしても、心血管疾患や2型糖尿病のリスクはやはり低下することが示されている。
「今回の調査結果は、減量プログラムが心血管疾患の危険因子を減らし、発症リスクを低下するのに効果的であることをあらためて示すものです」と、ジェブ教授は指摘している。
「確かに、いったん体重を減らした人でも、その後にリバウンドしてしまうことは少なくありません。
しかし、過体重や肥満の悩みを抱える人々が減量に取り組むことは、2型糖尿病や心血管疾患のリスクを軽減するための効果的な方法であることは確かです」としている。