糖尿病の3大合併症の中で最も深刻なのが、目に起こる網膜症です。
なぜかというと、網膜症は失明の原因になるからです。
成人してからの失明原因の第1位は、この糖尿病性網膜症です。糖尿病とわかって6年以上たつと、50%以上の患者さんに網膜症が起こってくるとさえいわれています。

1.網膜症

網膜症とは、カメラのフィルムの役目をする網膜が痛んでしまった結果起こります。
網膜は、光や色を感じ、それを脳に伝える役割をもっていますが、そこには細かい血管(細小血管)が無数に張り巡らさせています。
糖尿病では、血液が高血糖のため糖分を多く含み粘性が強いため、この細小血管をつまらせたり、血管壁に負担をかけ細小血管症を起こします。
そのため、網膜の酸素や栄養が不足してしまい、眼底出血や硝子体出血などの症状を示す網膜症が起こります。

2.白内障

糖尿病による白内障は、体内に糖分が増えるため、カメラのレンズにあたる水晶体に糖分が蓄積され、白く濁ってくるものです。
一般に白内障のほとんどが老人性白内障ですが、糖尿病のある場合は早めに白内障がでてきます。
多くは水晶体を取り出して、プラスチック製の眼内レンズを入れることでよくなりますが、重症の場合にはこの手術さえできなくなります。

3. 血管新生緑内障

網膜症の末期的段階に、ときに発病する血管新生緑内障は、糖尿病網膜症が原因となった場合、一般にいう緑内障とは違ったプロセスで発病します。
糖尿病網膜症が重症になると、虹彩というカメラの絞りにあたる役割をする部分に、新生血管という正常では存在しない血管ができます。
虹彩の周囲は、眼の中を潤すよう常に水が流れる構造になっているのですが、この新生血管のために水の出口である隅角がつまってしまいます。
このため、眼の中の圧力(眼圧)が高くなり、視神経が圧迫されて視力が低下し、ついには失明してしまいます。

網膜症の進行段階

段 階自覚症状治療法
単純性網膜症細小血管がつまってコブができることがあり、眼底検査をすると点状の出血が見られる。 全くなし血糖コントロールを適切に行うことによって、自然に消えていく場合がある
前増殖性網膜症さらに進行すると、網膜の血管が詰まって血液が流れない場所が出来てくる。それを補うために、新生血管を作り出す準備を始め、静脈が腫れ上がったり、異常な形の血管が見られるようになる。ほとんどないが、黄斑部に浮腫が起こると、著しい視力低下血糖コントロールの改善とともにレーザー光凝固を行う
増殖性網膜症網膜は酸素不足の状態になり、その酸素不足を補うために、もろくて破れやすい新生血管が出来てくる。やがてこれが硝子体に入り込んで、ここで衝撃を受けたり血圧が急に上がると、もろい血管が破れて眼底出血、あるいは硝子体出血などと呼ばれる大出血を起こしてしまう。 視力の低下網膜剥離失明することなどがあるレーザー光凝固術を行うこともあるが、硝子体出血や網膜剥離の状態には硝子体手術が行われる

レーザー光凝固とは
一定の部分の網膜の細胞を焼いて、新生血管を予防したり、できてしまった新生血管を焼き潰す治療法。

このように糖尿病網膜症は、かなり進行するまで自覚症状が見られない病気です。
自覚症状が出るころはすでに3段階まで進行していることになります。

日常生活でできる予防法は?

1.何よりも血糖コントロールが大事!

最近では、レーザー光凝固装置の改良が進み、硝子体手術も発達したため、不幸にして高度の視力障害になってしまった眼にも、有効な治療が可能になってきました。しかしながら、糖尿病の場合、網膜症を起こさないことが大切です。そのためには、糖尿病治療の基礎となる食事療法、運動療法に真剣に取り組み、血糖値のコントロールを良好に管理することが第一です。

2.定期的な検査を

糖尿病網膜症は、かなり進行するまで自覚症状が見られない病気です。
糖尿病とわかったら直ちに眼科で診てもらうことが最も重要です。眼底検査をすると、網膜症になる前でも、網膜の血液の流れ方に少しでも異常があればわかります。
一般に、糖尿病を患っている期間が長いほど、網膜症を合併する可能性も高くなるといわれます。

糖尿病と診断されたら、視力に変化がなくても、眼に異常を感じなくても、1年に一度くらいは眼科で診てもらいましょう。